食物アレルギー

『家で食べる』ということ

https://i0.wp.com/oyanagiallergyclinic.com/wp-content/uploads/2021/10/ym196966341910114216315.png?resize=256%2C256&ssl=1
Dr.小柳

みなさんこんにちは。
今日は食物アレルギーの方に大事なお話です。

『家で食べる』ということ

「完全除去」から「家で食べさせる」へ

食物アレルギーの治療方針はこの20年程度で様変わりしました。

以前はアレルギー食材は「完全除去」が基本であり、年齢が進んで血液検査(特異的IgE検査)の数値が改善すると「治ってきたみたいだから家で食べてみて」という指導が一般的でした。

それが、近年の研究で ”食物アレルギーは少しずつ食べさせた方が治りやすい” ということが判明してきたため、「完全除去」→「自宅で症状が出ない程度の少量を食べさせる」という流れになってきました。

食物経口負荷試験

この「家で少量食べさせる」ってどのくらいの量を食べたら良いんでしょう??

わからないですよね。
ほとんどの親御さんは医療関係者ではありません。

食べさせることができる量を最も正確に判断する材料が『食物経口負荷試験』です。
クリニックや病院で原因食物を食べてもらい、どの程度の量で症状が出るのかを観察する検査ですが、「摂取可能量」を決めるのに最も参考になります。

しかし、この食物経口負荷試験、かなりの時間と労力が必要な検査です。すべての食物アレルギー患者さんのすべてのアレルギー食材に対して行うことは不可能です。

専門医なら ”推測” が可能

小児科のアレルギー専門医は数多くの食物アレルギー患者さんの診療経験があるため、血液検査の値や誤食時の症状の出方などから、 ”自宅で食べることができる量” をある程度推測ができます。『食物経口負荷試験』を必ずしも行う必要はありません。

例えば、「自宅でゆで卵白を5g食べさせたら30分後に顔に蕁麻疹が出現した」という例であれば、「(症状が出た量の1/10である)ゆで卵白0.5gならば摂取できる可能性が高い」と言った具合です。

「自宅で食物アレルギー症状が出てしまった」というのは、言い換えれば「自宅で食物経口負荷試験を行なった」のと似たような状況な訳です。

自宅摂取量を細かく指導してくれないのは危険

「症状が出ない量を食べさせた方が良い」というのが近年のスタンダードですが、専門医じゃない医師が「自宅でちょっとずつ食べさせてみて」と指導する場合があるようです。この ”ちょっと” ってどのくらいの量を言っているのでしょうか?

卵アレルギーを例に挙げてみます

  • ゆで卵黄耳かき1杯
  • ゆで卵黄小さじ1杯
  • ゆで卵白1/4個
  • ゆで卵白耳かき1杯
  • ゆで卵白小さじ1杯
  • ゆで卵白1/4個

どれも ”ちょっと” ですよね。

でも、アレルゲン量の一番少ない「ゆで卵黄耳かき1杯」と一番多い「ゆで卵白1/4個」では100倍以上の差があります。

具体的な量を示さず「自宅でちょっとずつ食べさせてみて」という指導がとても危険なのがわかると思います。

食物アレルギーで自宅摂取する場合、『具体的な摂取量』を指示してくれる医師の管理下で行いましょう!

自宅摂取は『症状が出た時の対応方法』をしっかりと学んだ上で行う

食物アレルギーの自宅摂取ではその日の体調などにより症状が出てしまうことが多々あります。どんなに経験豊富な医師の指導があったとしても症状を完全に回避することは不可能です。

そのため、自宅摂取を行う上で最も大事なことは『症状が出てしまった時の対応方法』をしっかりと学んでから自宅摂取を行うことです。

当院では自宅摂取を指導する際に『自宅摂取で症状が出てしまった時の対応方法』を必ずセットで指導しています。

食物アレルギーで自宅摂取するためには『症状が出てしまった時の対応方法』を事前に学習しておく必要がある

https://i0.wp.com/oyanagiallergyclinic.com/wp-content/uploads/2021/10/ym196966341910114216315.png?resize=256%2C256&ssl=1
Dr.小柳

本日は『食物アレルギーでの自宅摂取』について解説しました。
みなさん、よくわからないまま”何となく”食べさせていませんか? ”何となく” は非常に危険ですよ!

文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)

クリックで『いいね!』 (3 いいね!)

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。