”腸内細菌” って聞いたことあるかな? アレルギーと強い関係があるんだって!
腸内細菌
腸内細菌とアレルギー
今日は 『腸内細菌』のお話をします。
皆さんは『腸内細菌』という言葉を聞いたことがありますか?
読んで字の通り、”腸の中に住んでいる細菌のこと” を『腸内細菌』と呼びます。
最近の研究で、この『腸内細菌』がアレルギーの発症や治癒に関わっていることが次々と明らかにされてきています。
腸内細菌とは
人間の腸の中にはものすごい数の細菌が住み着いています。1000種類くらいある細菌のうち、数十種類が腸の中に住み着いているのですが、どの種類の細菌がいるかは人によって様々です。
この腸内細菌は、普段は食べ物の消化を手伝ったりしてくれる細菌で、人間が生きていく上で必要不可欠なものです。
実は、腸内細菌は消化を助けるだけではなく、様々な病気の発症に関与したり、体を異物から守る ”免疫機能” に深く関わっているのです。
腸内細菌の種類
あまり科学的な分類ではないのですが、一般的に、以下のように分類されています。
- 人間にとって有益な細菌:乳酸菌やビフィズス菌など →善玉菌
- 病気の原因になることがある細菌:大腸菌やウェルシュ菌など →悪玉菌
- 普段はあまり活躍しているように見えない細菌:クロストリジウム菌やバクテロイデス菌など →日和見菌
乳酸菌やビフィズス菌が体に良いことは昔からよく言われているので、イメージしやすいと思います。
しかし、乳酸菌やビフィズス菌はアレルギーの発症に直接影響しているわけではありません。
アレルギーの発症に関わったり、免疫機能を調節するのに大きく関わっているのが『クロストリジウム菌』という細菌であることが徐々にわかってきています。
クロストリジウム菌
クロストリジウム菌と呼ばれる細菌は、さらに何百種類にも分かれています。
数多あるクロストリジウム菌の中でも、酪酸(らくさん)を産生する 細菌(別名:酪酸菌)がとくにアレルギーの発症や免疫機能の調節に強く働いていることがわかってきました。
今後、この ”酪酸菌” の研究が進めば、アレルギーの治療や予防に役立つ薬の開発につながるかもしれません。
乳酸菌やビフィズス菌の役割
クロストリジウム菌が重要な細菌であることはわかりました。では、乳酸菌やビフィズス菌はアレルギーにとって無用なのでしょうか?
そうではありません!
乳酸菌やビフィズス菌は直接アレルギーの発症や免疫機能の調節には関わっていないようなのですが、上記の ”酪酸菌”など、免疫機能の調節に働く細菌を増やしてくれる役割があるようなのです!
腸内細菌をアレルギーの改善に役立てる
乳酸菌やビフィズス菌を摂れば ”酪酸菌” が増えてくれる
酪酸菌が多いほどアレルギー疾患が治りやすくなるだろうと考えられていますが、酪酸菌は腸内でしかなかなか増やすことができない細菌です。
乳酸菌のように ”ヨーグルト内で増殖させる” といった技が使えないため、『酪酸菌ドリンク』や『酪酸菌ヨーグルト』など、安直な食品を作ることができません。
しかし前述のように、乳酸菌やビフィズス菌が腸内に入ると、この ”酪酸菌” を増やしてくれる作用があります。
さらに、乳酸菌、ビフィズス菌には病原性大腸菌のようないわゆる悪玉菌を減らしてくれる作用もあります。
乳酸菌・ビフィズス菌飲料やヨーグルトを定期的に摂取しよう!
乳酸菌やビフィズス菌を腸内に定期的に取り込むと、腸内細菌がとてもよいバランスになり、アレルギー疾患が治りやすくなるだろうと考えられています。
食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎など、さまざまなアレルギー疾患に良い影響がありそうです。
乳酸菌・ビフィズス菌飲料/ヨーグルトがアレルギー疾患に有用であるのは様々な研究データから裏付けられています。
しかし、注意があります。
乳酸菌やビフィズス菌は腸内にあまり定着しないため、『定期的に摂り続ける必要がある』のです。
一回食べて終わり、ではダメなようです。
食物繊維・発酵食品も有用
ヨーグルトや乳酸菌飲料が苦手な人や乳アレルギーの人も諦める必要はありません。
野菜/果物に多く含まれる食物繊維や、漬物や納豆などの発酵食品は ”酪酸菌” の餌になることがわかっています。
これらの食品を摂ることで、”酪酸菌” を増やすことができるでしょう。
腸内細菌のバランスを良くするのはアレルギーにとって有用ですが、短期間で結果が出るものではありません。
ヨーグルトなどを摂りすぎると、現在の腸内細菌と相性の悪さなどから下痢をしたりする場合もあるので、少しずつ取り組むのが大事です。
ヨーグルトや納豆、漬物、食物繊維はアレルギーを治すのに有用なんだね。定期的に食べるのが大事だよ!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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