昨日の記事の続きだよ!
食物アレルギーは皮膚で感作され、食べると治っていく!
二重暴露仮説
食物アレルギーは皮膚から感作(アレルギー体質が作られる)が起こることは昨日の記事で取り上げましたが、その事実を発表されたイギリスのLack. G先生は、2008年にさらに進んだ学説を発表されました。
それが、『二重暴露仮説』です。
ざっくりと要点をまとめると、
乾燥肌や湿疹など荒れた皮膚から、目に見えないほど小さい食物成分が染み込み、免疫系細胞に働いてアレルギー体質が作られる(経皮感作)
食事として適切な量・タイミングで摂取された食物成分は消化管(腸)から吸収され、免疫系細胞に働いてアレルギー反応を抑えるように働く(腸管免疫寛容)
というものです。
今までは、”乳児期に離乳食で食べた時に食物アレルギー体質が作られる” とずっと考えられていたのですが、どうやら食べることでアレルギーは抑えるように働くようです。
もちろん、すでに強い食物アレルギー体質になってしまっている場合はある程度の量を超えて食べるとアレルギー症状が出てしまいます。食物アレルギー症状を発症させずに食べるのが重要です。
この、食べるとアレルギーが治っていくという『腸管免疫寛容』ですが、その後のたくさんの研究でその傾向がはっきりと支持されています。
食物アレルギーは『完全除去』から『症状が出ないように食べる』時代へ
専門家の指導の下、症状が出ないように上手に食べるのが大事
様々な研究で、食物アレルギーは『完全除去』よりも『症状が出ない範囲で食べる』ほうが治っていきやすいことがわかっています。
ただし、この ”症状を出さない範囲で” というのが曲者で、どのくらいまで食べて良いのか、全くわからないのです。
では、どうしたらよいのか?
”実際にアレルギー原因食品を食べてみて症状が出るかどうかを観察する” = 食物経口負荷試験 という検査が必要になります。
アレルギー症状が誘発されてしまうことも多い、危険と隣り合わせの検査ですので、ある程度この検査に慣れていないとどの程度の量を食べさせてみるか、難しい検査になります。
私はアレルギー専門医としてそれなりの数の食物経口負荷試験を行なってきていますが、それでも稀に予期しないほどの強い症状が出ることがあります。
なかなか匙加減が難しく、経験頼りなところが、この食物経口負荷試験があまり普及しない一つの理由です。
今後も必要に応じて食物傾向負荷試験を行なっていきます
現在勤務している立川綜合病院では、食物経口負荷試験を定期的に行なっていますが、クリニック開院後も継続したいと思っています。
もちろん、危険を伴う検査ですので、個人のクリニックでやるのには注意が必要ですが、”食べられる範囲で食べた方が治りが良い” という明確なエビデンスが出ていますので、頑張っていきたいと思います。
食物経口負荷試験は重要な検査だけど、強い症状が出る危険性も含んでいることが分かったかな? 重い症状が出たことがある人は特に、専門家の下でしっかり準備をして行うのが大切だよ!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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