汗をかくとアトピーが悪化する人がいるんだって!
汗をかくと皮膚炎が悪化
アトピー患者の半数くらいが汗で皮膚炎悪化
私のところに定期通院してくださっている患者さんたちの1/3〜1/2くらいがアトピー性皮膚炎として治療をしています。
正確にデータを取ったわけではありませんが、およそ半数が汗をかくと皮膚炎が悪化する傾向があるようです。
汗には2種類ある
実は、人間の汗は大きく分けて2種類存在します。
環境や活動に関係なく常に分泌されている汗 ”サラサラ汗”
みなさんの皮膚の表面には24時間常に微量の汗が分泌されています。この汗は皮膚を保湿し、外敵から皮膚を守り、かゆみを抑えたりする作用があります。皮膚の恒常性維持(正常な状態を保つ)に関わっている、人間にとって必要不可欠な『汗』です。
暑い環境や運動時などに分泌される汗 ”ベトベト汗”
暑い夏場や運動時などにダラダラしたたってくる汗です。暑くなりすぎた皮膚を冷やす効果がありますが、ベトベトしており、匂いが強い特徴があります。こちらの『汗』は長時間放置すると皮膚にとっては有害で、かゆみを誘発したり、皮膚炎の原因となる場合があります。
ベトベト汗の中にカビが生える
上記の ”暑い環境・運動時のベトベト汗” を放置すると数時間でカビ(正確には真菌といいます)が生えてくることがあります。
『マラセチア菌』がその代表格です。汗の中に生えてきても目には見えません。2、3日汗を放置するとかなり増殖することがわかっています。
『マラセチアアレルギー』だとより強く皮膚炎を起こす
この『マラセチア菌』にアレルギー体質があると、より強い皮膚炎を起こすことが知られています。
さらに困ったことに、普段アトピー性皮膚炎の治療に使用している『ステロイド軟膏』は皮膚の免疫力を抑える方向に働くため、『マラセチア菌』をやっつける力が低下します。
皮膚炎の治療にステロイド軟膏は必要不可欠なのですが、汗の処理(石鹸でよく洗えばマラセチア菌はかなり減る)をせずにステロイド軟膏を塗り続けると、皮膚が『マラセチア菌』だらけになってしまう恐れがあるので注意しましょう。
血液検査で『マラセチアアレルギー』かどうかは判断可能
アトピー患者全員に行うわけではありませんが、汗で皮膚炎がかなり悪化する方に対して、マラセチア特異的IgE検査(血液検査)を行うことがあります。
陽性率はそれほど高くはありませんが、この検査で陽性の方は、”汗の処理をこまめにする必要がある” ということになります。
汗の処理が大事
ベトベト汗には『シャワー+保湿剤』が最適
暑い環境や運動時に『ベトベト汗』をかいてしまったら、なるべく早くシャワーを浴びましょう。タオルで拭くだけだと汗の成分が取りきれません。シャワーがない環境であれば、濡れタオルで優しく拭いて対処しましょう。
シャワーや濡れタオルで汗を落とすと、皮膚を保護してくれている ”サラサラ汗” も一緒に落ちてしまいます。シャワーや濡れタオル後は保湿剤を塗り直して皮膚を保護するのが大切です。
重症の『マラセチアアレルギー』では除菌療法も
あまりにもひどい『マラセチアアレルギー』体質の方には、皮膚からマラセチア菌を除菌する『抗菌薬』を内服して治療することがあります。
結構効果があるのですが、マラセチア菌はそこらじゅうに存在する真菌なので、一度除菌して皮膚炎が改善しても、しばらくするとまた皮膚に生えてくることが多いです。
あくまでも急な増悪時の一時的な治療です。やはり、こまめな汗の対処が大事です。
『ベトベト汗』を長時間放置するのが良くないんだね。洗い流した後に保湿剤を塗り直すのがポイントだよ!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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