にゃほー。
今日は『ステロイド外用薬の副作用』についての特集だよ!
「ステロイド外用薬の副作用についてまとめてほしい」というご要望がありましたので、まとめてみます。
『ステロイドの副作用』を心配されている方は多いと思いますが、最初に最も大切なことを言います。
・『ステロイド』は常に体内で分泌されているホルモンの一種です。ステロイドがなければ人間は生きることができません。
・「ステロイド内服薬・注射薬」と「ステロイド外用薬」の副作用は全く違います!
・ほとんどの『ステロイドの副作用』は薬剤の中止により改善します。
ステロイド
ステロイドとは
ステロイドは常に体内で分泌されているホルモンの一種です。ステロイドの本来の働きは「身体中の細胞をスムーズに働かせること」です。
もし体内からステロイドが全くなくなってしまうと、身体中の細胞が機能不全を起こし、生きることができません。
『ステロイド』という言葉を聞くと、なんとなく『アンドロイド』みたいに ”人工物” のイメージがありますが、人間だけでなく、多くの生物が常に自ら分泌している物質なのです。
生物にとってステロイドは ”異物” ではない
ステロイドには免疫細胞の暴走を食い止める作用がある
リウマチやSLEなどの膠原病、慢性の腎臓病、神経疾患、アレルギー疾患など、様々な病気に対して『ステロイド薬』が使用されています。
ステロイドには「過剰になりすぎた免疫細胞の活動」を抑える効果があり、上記のような「免疫細胞が暴走するのが原因の病気」にとても効果的なのです。
アレルギーは免疫細胞が暴走して症状が悪化します。「気管支喘息」「アトピー性皮膚炎」「じんましん」「アレルギー性鼻炎」「アレルギー性結膜炎」ほぼ全てのアレルギー疾患に対して『ステロイド薬』が使用されています。
ステロイドの副作用
「内服薬」「注射薬」と「外用薬」とでは全く副作用が違う
前述のように、ステロイドは体に必要な物質なのですが、高濃度で体内に存在した場合、様々な副作用があります。
「内服薬」や「注射薬」では投与された薬剤のほぼ全てが体内に入り、血中に流入します。そのため、通常体内で分泌されているステロイド量よりも高濃度となって全身に作用します。薬剤量や使用期間によっても左右されますが、ステロイドの「内服薬」や「注射薬」は全身の副作用が出やすいと言えます。
これに対し、ステロイド「外用薬」は主に皮膚のみに作用する薬であり、血管内に流入する量はごくわずかです。「内服薬」や「注射薬」でみられるような全身性の副作用はかなり稀であり、皮膚局所の副作用が問題になります。
〔ストロンゲストクラス(最も強いランク)のステロイド外用薬を全身に大量に塗り続ければ全身性の副作用が出ることはあります。〕
「内服薬」「注射薬」の副作用
高用量、長期にステロイド「内服薬」「注射薬」を投薬された場合、以下のような副作用が見られることがあります。
- 易感染性:免疫細胞の働きが抑制されることで、感染症にかかりやすくなります
- 糖尿病、高脂血症、高血圧:糖や脂質、塩分の代謝バランスが崩れることが原因です
- 消化性潰瘍:胃粘膜を保護する成分の分泌が減るのが原因です
- 骨粗鬆症、骨発育不全:カルシウムなど、骨の代謝バランスが崩れることが原因です
- 満月様顔貌:脂質代謝バランスが崩れることが原因です
- 精神症状:神経活動に関わる物質の分泌が抑制されることが原因です
- その他:白内障・緑内障、ステロイド筋症、月経不順など
「外用薬」の副作用
ステロイド「外用薬」は血管内に吸収される量はわずかであり、上記のような全身性副作用は非常に稀です。代わりに、皮膚局所の副作用には注意が必要です。
- 皮膚の感染症:皮膚表面の免疫細胞の活動低下により、「とびひ」「ニキビ」などの細菌感染、「水虫」などの真菌感染、「水イボ」などのウイルス感染が起こりやすくなります
- 産毛(うぶげ)が生えやすくなる:ステロイドが毛根に作用して毛の発育を促進します
- 皮膚が薄くなる:高濃度のステロイド外用薬を同部位に塗り続けると皮膚が薄くなり、毛細血管(皮下の血管)が目立つ様になります
- 皮膚紅潮、赤ら顔、口囲発赤:ステロイドの影響で毛細血管が拡張することで赤く見えます
- 皮膚が部分的に色白になる:メラニン細胞(日焼けの時に強く活動する細胞)の働きが弱まることで起こります
- その他:接触皮膚炎など(ステロイドに限らず、塗り薬自体が皮膚炎の原因となる場合が稀にあります)
「とびひ」などに代表される皮膚の感染症については、『ステロイド外用薬』を”塗る” ”塗らない”に関係なくアトピー性皮膚炎の皮膚では起こりやすいものです。「とびひ」になってしまったのに『ステロイド外用薬』を塗り続けていると「とびひ」がさらに悪化する可能性があるので要注意です。
年齢や皮膚炎の状態に応じた ”適切な” ステロイドランク(強さ)、用量、用法を使用する限り、その他の副作用は稀です。
万が一、上記の副作用が出てきたとしても、ステロイド外用薬の使用を休止し、適切な処置を施すことで改善します。ステロイド外用薬の用量や用法を大きく間違わない限り、一生治らないような副作用はほぼゼロと考えてください。
「ステロイド外用薬」はアトピー性皮膚炎の治療に有用ですが、上記のような副作用が出ることがあります。
ステロイド外用薬を使用していて、”皮膚の状態が悪化” してしまった時は一旦ステロイド外用薬の使用を止め(保湿剤は塗り続けていてください)、早めに主治医と相談してください。
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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