にゃほー。
”症状が出る前から” 服用?なんで??
みなさんこんにちは。
今日はめちゃくちゃマニアックなお話ですよー。
本記事は当ブログをこっそりご覧いただいているであろう医師・薬剤師の方向けの内容です。かなりマニアックなお話ですので、一般の方はスルーしてください。
抗ヒスタミン剤は ”症状が出る前から” 服用すべし
医師・薬剤師・看護師など医療専門職の皆様。
”抗ヒスタミン剤は「症状が出る前から」または「軽症のうちから」服用するとよく効く” と聞いたことはありませんか?
これは薬理学的に証明されているのですが、説明できますか?
今日は『抗ヒスタミン剤の薬理作用』についてのお話です。
抗ヒスタミン剤はヒスタミンの作用を抑制するお薬
抗ヒスタミン剤はその名の通り、「ヒスタミンの作用を抑制する」作用があります。
- 花粉やダニなどのアレルゲンが体内に侵入すると、花粉特異的IgEやダニ特異的IgEと結合し、肥満細胞がアレルゲンの存在を認識します。
- アレルゲンを認識した肥満細胞はヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質を細胞外に放出します。
- ヒスタミンは全身の様々な場所にあるヒスタミン受容体と結合し、鼻汁を分泌したり、眼のかゆみ・充血などを引き起こします。
抗ヒスタミン剤はこの「3」の過程である、ヒスタミンとヒスタミン受容体の結合を阻害するのが主な作用機序とされています。
アンタゴニスト
上図のように、伝達物質が受容体に結合するのをブロックして作用を阻害するのを『アンタゴニスト』と呼びます。
一般的に ”抗ヒスタミン剤はヒスタミンの『アンタゴニスト』” として認識されていることが多いようですが、実は間違いです。正確には、”抗ヒスタミン剤はヒスタミンの『インバースアゴニスト』” なんです!
インバースアゴニスト
『インバースアゴニスト』って聞いたことがありますか?
参天製薬HPより引用
伝達物質が受容体に結合するのを物理的にブロックするのが『アンタゴニスト』であるのに対し、伝達物質が来る前に受容体に作用して抑制的なシグナルを発生させるのが『インバースアゴニスト』です。
抗ヒスタミン剤は正確に言うとこの『インバースアゴニスト』であり、ヒスタミンの存在が無くても効果を発揮することができることが判明しています。
『インバースアゴニスト』と受容体が結合している部分に伝達物質が到着すると、さらに強い抑制シグナルを発生することもわかっています。
抗ヒスタミン剤は『インバースアゴニスト』
非常にマニアックな内容で申し訳ありません。
一般の方は『抗ヒスタミン剤は症状が出る前から服用しているとよく効く』だけ覚えていただければOKです。
医師・薬剤師の皆さん、参考になりました?
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
コメント