食物アレルギー

大人の食物アレルギー

大人の食物アレルギーパターン

秋〜冬は食物アレルギー生活管理指導表提出シーズンのため、小児の食物アレルギー相談が非常に多いのですが、そんな中ちらほらと成人の食物アレルギーのご相談があります。

成人の食物アレルギー患者の診療を続けてきて、いくつかの『パターン』に分類されることに気づきました。今日は備忘録も兼ねてまとめたいと思います。

1.小児期から続いている

最も一般的なのが「幼少期に食物アレルギーが判明し、除去を続けていたけれど成人になっても治らなかった、続いている」というケースです。

エピペンを処方されるような重症患者ほど成人移行しやすく、鶏卵・乳・小麦よりも甲殻類・ナッツ類・魚卵・ソバなどのほうが成人移行しやすい傾向があるようです。

小児科に通院していたけれど、15歳または18歳を境に小児科通院を終了した、その後どこにもかかっていないという方がとても多いように感じています。

2.大人になってから初めて食べた

それほど多くないかもしれませんが、「小児期には全く食べたことがなかった食品を成人後に初めて食べて発症」というケースも存在します。

鶏卵・小麦など、常日頃から食べている食品ではなく、カシューナッツ・イクラなど、食べる機会が少なめの食品が該当します。

これも「何科に受診すればよいの?」と困るケースです。

3.成人に特有の食物アレルギー

上記1、2は一般的な食物アレルギー(即時型食物アレルギー)ですが、「小児期には発症しづらく、成人で発症しやすい特殊な食物アレルギー」が存在します。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

原因食品を食べた直後に運動が重なることで全身のアレルギー症状が出現する、重症の食物アレルギーです。小麦や甲殻類が原因食品となりやすいです。重症度にもよりますが、エピペンの処方が推奨されます。

原因食品が小麦だと食生活に大きな影響が出ることは必至ですが、食物指導などを詳しく行ってくれる成人の診療科がほとんど無いのが現状です。

口腔アレルギー症候群

「子供の頃は果物を普通に食べられていたんだけど、大人になってから食べると口がイガイガする」というやつです。

ハンノキ・シラカンバ花粉症などの花粉症体質があると発症しやすいことがわかっています。花粉症は10歳以降に発症することが多く、口腔アレルギー症候群も10歳以降の初発が多いようです。

4.そもそも食物アレルギーではない

当クリニックを開業してから2年半が経過しましたが、数ある成人の食物アレルギー相談で一番多いのがこのケースかもしれません。

「最近体調が悪いんだけれど、食物アレルギーでしょうか?(小児期の食物アレルギーなし)」「小麦(糖質)を食べるとだるくなる」「皮膚にブツブツ(湿疹)が出てきたんだけど、食べ物が原因でしょうか?」などなど・・・

みなさんかなり困られており食物アレルギーを強く心配されているため、血液検査なども行いますが、”まったく検査異常なし” という方が多いです。

「だるい・体調が悪い」などは他の病気が潜んでいる可能性もあるため、症状が長引くようなら総合内科への受診をおすすめします。

成人食物アレルギー診療経験から所感
「小児の食物アレルギー→小児科」ですが、「大人の食物アレルギー→?科」ということで、そもそも何科にかかればよいのか全くわからない状態です。50年前なら食物アレルギーの成人は非常に少数だったので大きな問題にならなかったと思いますが、近年は成人の食物アレルギーが非常に増えています。そろそろ『成人の食物アレルギーに対応する施設』を整備しなければいけないと思います。
残念ながら、当院のように ”子供から大人まで、アレルギーの病気はなんでもご相談できます” などという医療機関は全国的にも非常に稀です。今後、診療科の枠を超えた対応ができる医療機関が全国中に増えてくるのを願っております。

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Dr.小柳

成人の食物アレルギーでお困りの方、ご相談ください。

文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)

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