
にゃほー。今日は『百日咳』についての特集だよ!

みなさんこんにちは。
全国で百日咳が流行しているようなので、臨時特集です。
百日咳
全国で百日咳が流行、新潟県で突出
2025年第13週(3月24日~30日)における百日咳の全国の感染者数は、578人でした。これは前年同週(2025年第12週)の458人と比べて、増加傾向となっています。第13週の感染者数は全国的に分布していますが、特に新潟県で73人と最多となっており、ほかの地域と比べて突出しています。(Yahooニュース 2025.4.9)
4月に入ってからかなり話題になっていますが、現在全国で百日咳が流行しています。特に新潟県で患者数が突出しており、かなり注意が必要な状態です。
百日咳は他の風邪と大きく異なる特徴があり、色々と注意が必要なので特集します。
百日咳の特徴
みなさん、なぜ『百日咳』と呼ぶかご存知ですか?
答えは、その名の通り「百日くらい咳が続く風邪」だからです。びっくりですよね!?
通常の風邪でおよそ1週間、気管支炎など下気道感染を起こす風邪でも2〜3週間で症状が落ち着くことが多いです。新型コロナで咳が長引く場合も、ごく一部を除いて2〜4週間程度で咳症状は軽快します。
これに対し、百日咳は十分な治療を施さないと2〜3ヶ月もの長期間、咳が続いてしまうのです。
原因
グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)が原因菌ですが、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)も原因となる場合があるようです。
感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染がメインです。
症状
症状は以下の3期に分けられます。
カタル期(感染から最初の約2週間)
病原菌の感染から7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状(咳、鼻汁、まれに発熱)で始まります。この段階では他の風邪と見分けが困難です。発症から1週間程度経過すると次第に咳が多くなり、咳き込む事が増えてきます。
痙咳期(カタル期後2〜3週間)
次第に百日咳に特有の発作性の痙攣咳(痙咳)となっていきます。
短い咳が急激に連続で起こり(スタッカート)、これ以上咳ができないくらい息を吐ききったところで、笛の音のようなヒューという吸気音を発声します(笛声:whoop)。この様な特徴的な咳込み発作をくり返すことをレプリーゼと呼びます。咳込み時に胃痙攣を起こすことがあり、年長児や成人でも咳き込み嘔吐を起こすことがあります。
夜間の発作が多く、特に未明から早朝に咳き込み発作が頻発するのが特徴です。
乳児(1歳未満)では症状が非定型的で、咳がほとんど無く、単に息を止める無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止に至ることもあります。百日咳で死亡することは非常に稀ですが、生後6カ月未満児では致命率0.6%というデータがあります。
回復期(痙咳期後1ヶ月程度)
激しい咳発作は徐々に減ってきます。回復期に至ると、1日中の咳込みは見られなくなりますが、1日1〜2回程度の発作性痙攣咳が見られます。全経過約2~3カ月で回復していきます。
成人でも発作性痙攣咳が出ることもありますが、小児と比べると少ないようです。軽症の成人は見のがされやすく、長期間排菌する場合があるため、感染源となりやすい特徴があります。
治療
百日咳菌に対する治療として、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が有効です。感染から早期に抗菌薬治療が奏功した場合、痙咳期を経ずに短期間で治癒する場合もあります。ただし、感染初期のカタル期を過ぎてしまうと抗菌薬の効果はあまり期待できません。
カタル期〜痙咳期には去痰剤や気管支拡張剤などの風邪薬が処方されることが多いですが、百日咳の咳にはあまり効果がありません。特に痙咳期の咳込み発作に効く薬はほとんど無く、鎮咳剤などもほとんど無効です。漢方薬などが処方されることもありますが、百日咳の咳込み発作に対して劇的に効く薬というのは存在しません。
感染初期に百日咳を疑い、いかに早く抗菌薬治療ができるかどうかが百日咳治療の鍵です。
新生児、乳児では重症になる場合があり、入院治療が必要になる場合があります。
予防
予防では、国内で1歳未満のお子さんに従来勧められてきた定期予防接種の3種混合ワクチン(DPT)、4種混合ワクチン(DPT-IPV)、および近年主流となった5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が有効です。感染確率を下げる効果が期待できますが、最終接種から4〜5年以上経過すると徐々に予防効果が低下していくことがわかっています。
上記予防接種から5年以上経過している場合、百日咳の感染リスクはかなり高くなります。
百日咳の流行に伴い、11歳〜13歳で接種する2種混合ワクチン(DT)を3種混合ワクチン(DPT)にすべきとの議論がなされていますが、現状では公費(実費負担なし)で接種できるのは2種混合ワクチン(DT)です。百日咳の感染が心配な方は自費で2種混合ワクチンを3種混合ワクチンに変更することが可能です。

当院でも「自費の3種混合ワクチン」を近日対応開始いたします。詳細はお知らせにてお伝え予定です。
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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