今日はアトピーの話題だよ!
現在、立川綜合病院で小児科医として勤務していますが、私の外来に通院してくださっている患者さんの1/3ほどがアトピー性皮膚炎の体質があります。当院の皮膚科に常勤医が不在なのもあると思いますが、アレルギー専門医として皮膚炎の症状で私の元に通院してくださるのは本当にありがたく、医者冥利に尽きます。
以前の記事ではアトピーの最新治療について触れましたが、本日はアトピーの大敵、”とびひ” についてお話しします。特に夏場は汗をかいて掻きむしることで “とびひ” ができやすい時期です。是非参考にされてください。
とびひ
『とびひ』とは
アトピー性皮膚炎では、乾燥肌や湿疹により皮膚の細胞がボロボロになっています。すると、皮膚のバリア機能が破綻し、皮膚の表面から体内へ異物や外敵が侵入できる状態になります。
皮膚の表面には普段から様々な細菌が付着しているのですが、アトピーの乾燥肌や湿疹部ではバリアが破綻しているため、これらの雑菌がどんどん皮下に侵入してきます。
少量の雑菌なら自身の免疫機能でやっつけることができるので問題ありませんが、多量の雑菌が繰り返し皮下に侵入してくるとやっつけきれなくなり、皮下で増殖し始めます。これが『とびひ』です。
ちなみに、『とびひ』の正式名称は『伝染性膿痂疹』と言います。
『とびひ』の特徴
上の写真が『とびひ』の典型的な湿疹です。
- 中心部がジュクジュクした ”びらん” になっており、膿汁(滲出液、しんしゅつえきとも言います)が出るような状態です。この ”びらん” 部位は適切な治療を行うと ”かさぶた” になって治っていきます。
- 強い炎症を起こすと、水ぶくれ(水疱)を作ることがあります。上記の写真でも数個水ぶくれ(水疱)がみられます。
- 辺縁部はほんのりと赤く腫れています。この部位だけ見ると、通常のアトピー性皮膚炎と見分けるのは難しいです。
”とびひ” 部位を触ると、手にとびひの原因菌が付着します。その手で他の皮膚を引っ掻くと、そこに新しい ”とびひ” が出来てしまいます。このように、どんどん 湿疹が ”飛び火” のように増えてしまうため、この細菌感染による皮膚炎を ”とびひ”と呼ぶようになったそうです。
”とびひ” の治療
”とびひ” の治療は原因菌をやっつける抗生剤(最近は抗菌薬と呼ぶようになりました)です。部分的な ”とびひ” には抗生剤入り軟膏、広い範囲の ”とびひ” には内服薬を使用します。
アトピーの湿疹とは全く違う治療ですので注意してください。
”とびひ” 部位にはステロイド軟膏を塗り続けてはいけない
アトピー性皮膚炎の標準的治療薬であるステロイド軟膏は、アトピー性皮膚炎を治すために必要不可欠な薬剤です。しかし、『免疫機能を落ち着かせる』薬であるため、強いステロイド軟膏を塗っている部位は雑菌をやっつける能力が落ちます。
”とびひ” ができてしまったのにステロイド軟膏を塗り続けると、”とびひ” がなかなか治らず、どんどん悪化してしまいます。
とびひができたらステロイド軟膏中止!抗生剤!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
アトピー患者は”とびひ”ができやすいんだね。”とびひ”に気づかずにステロイド軟膏を塗り続けると悪化しちゃうんだって!! 注意しなきゃね!
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