喘息と新型コロナの関係について、色々とわかってきたみたい。今日はその解説だよ!
新型コロナウイルス感染症が全国で蔓延してしまい、特に気管支喘息を患っている方はとても心配されていると思います。(喘息については以前の記事、気管支喘息のヒミツ・気管支喘息のヒミツ2をご参照ください。)
喘息と新型コロナの関係について、いくつか論文が発表されていますので、噛み砕いて解説します。
喘息と新型コロナについて、わかってきたこと
喘息を患っていても新型コロナの重症化にはあまり関係がない
気管支喘息を患っている患者さんは、新型コロナウイルスに感染すると ”重症化しやすくなるのではないか” と心配されている方が多いのではないでしょうか?
実際にアレルギー外来に通院してくださっている喘息患者さんからも毎日のように質問をいただきます。
いくつもの研究論文で示されている結論はこれです。
喘息と新型コロナの重症化は関連がなさそう。
これは複数の論文で示されていることで、かなり信憑性のあるデータです。
Chhiba KD et al. J Allergy Clin Immunol. 2020; 146: 307-14.など
喘息持ちの方が新型コロナにかかりにくい?!
さらには、”喘息持ちの方のほうが新型コロナウイルスにかかりにくい、重症化しにくい” というデータまで出てきています。
こちらも、おそらく正しいだろうと思いますが、まだデータが少ないですので、更なるデータの上積みに期待です。
Matsumoto K et al. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 55–57.
ACE2受容体
では、なぜ喘息患者は新型コロナにかかりづらい・重症化しにくいのでしょうか?
その理由の一つが ”喘息患者では肺の中のACE2受容体が減っている” というものです。
Jackson DJ, et al.J Allergy Clin Immunol. 2020 Jul; 146(1):203-206.e3
ACE2受容体はもともと血圧を調節する役割があり、全身のあらゆる部位に発現しています。理由はわかりませんが、喘息患者では肺内のACE2受容体が減っている方が多いようです。肺内の一部で減っているだけですので全身の血圧調節には影響は無いようです。
新型コロナウイルスはこのACE2受容体にくっついて体内に侵入することがわかっており、ACE2受容体が少なければ少ないほど『感染しにくい』・『肺炎などの重症化』もしにくいと予想されます。
画像:news-medical.net
喘息をしっかり治療していると重症化しにくい
他にも、”喘息の治療をしっかりと行なっている人の方が、そうで無い人と比べて重症化しにくい”というデータが出ています。
Eur Respir J. 2020 Dec 17;2003142. doi: 10.1183/13993003.03142-2020.
喘息の治療で使用される吸入ステロイド薬は、気管支や肺内の炎症を抑え、空気の通り道を広げる役割があります。この吸入ステロイド薬は ”気道のACE2受容体を減らす作用があるかもしれない” と考えられています。
喘息治療でモンテルカストを内服していると、新型コロナ感染率・重症化率が低い
また、喘息患者のほとんどの方に処方されるモンテルカスト(オノン®︎、シングレア®︎、キプレス®︎という商品名です)を内服している方が ”新型コロナ感染率・重症化率ともに低かった” というデータも出てきました。
Khan A, et al. Montelukast in hospitalized patients diagnosed with COVID-19. 2020. doi:10.21203/rs.3.rs-52430/v1.
喘息があるからといって極度に恐れる必要はなさそうですが、何度もお話ししているように、新型コロナウイルス感染症はかなり ”やばい” 感染症です。注意しましょう。
喘息持ちでも極度に怖がる必要はないんだね。でも新型コロナにかからないに越したことはないね!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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