昨日の記事の続きだよ!
皮膚のバリア機能が壊れている限り、炎症は何度も繰り返す
アトピー性皮膚炎患者は遺伝で『皮膚バリア機能』が壊れることが決まっている
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、『皮膚バリア機能』が破綻し、雑菌や刺激物が皮膚を通過して体内に侵入し放題になっていることは昨日の記事で述べた通りです。
アトピー患者さんの半数以上に、皮膚に水分を保つための『皮膚保湿因子』を作る遺伝子や、『表皮細胞の結合の強さ』に関わる遺伝子などの ”皮膚バリアに関連する遺伝子” の異常が認められています。
実はアトピー患者さんの『皮膚バリア崩壊』は多くが遺伝で決まっており、生まれた時点で将来アトピー性皮膚炎になってしまうことがほぼ決定しているのです。
ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏では『皮膚バリア機能』は治らない
アトピー性皮膚炎で皮膚科や小児科を受診すると真っ先に処方されるのがステロイド軟膏やタクロリムス軟膏(プロトピック®︎)です。
この薬は炎症を鎮静化する作用があり、しっかりと塗ると数日で炎症は落ち着いていきます。
しかし!
ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏(プロトピック®︎)には皮膚バリア機能を回復する効果はほとんどありません!
ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏などで皮膚炎が少し落ち着くと、保湿剤も含めてすぐに塗るのを止めてしまう方が多いのですが、皮膚バリア機能が破綻したままなので、またすぐに炎症を繰り返します。
保湿剤こそが『皮膚バリア機能』を回復してくれる
破綻した『皮膚バリア機能』を復活させるのに重要なのが保湿剤です。
保湿剤の主な作用は以下の通りです。
- 激減してしまった『表皮内の保湿因子の補充』
- 消失してしまった『皮脂膜』の復活
この作用により、皮膚からの水分の消失を防ぎ、皮膚バリア機能が復活します。そして、雑菌や刺激物(アレルゲン)の体内への侵入を防ぎ、再び皮膚炎が起きるのを防いでくれるのです。
保湿剤を塗り続けると皮膚を正常化していく
保湿剤は一時的なバリア機能回復だけじゃなく、恒常的な皮膚正常化をしてくれる
保湿剤の作用は一時的な『皮膚バリア機能』の復活だけではありません!
- 保湿剤を数ヶ月〜数年間、しっかりと塗り続けると、ボロボロになっていた『表皮細胞・角質細胞』が徐々に修復され、皮膚は正常化していきます。
- さらに、皮脂を分泌する『皮脂腺』やサラサラ汗を分泌する『エクリン腺』などの数を増やし、自力で皮膚バリア物質の分泌ができるようになっていきます。
アトピー体質で生まれた人でも、保湿剤を大量に長期間塗布することで皮膚は徐々に正常な皮膚へと変わっていきます。
完全に皮膚が正常化してくれば、いずれは保湿剤も止めることができる
最重症のアトピー性皮膚炎を除いて、多くのアトピー性皮膚炎は、最終的には保湿剤塗布無しでもしっとりとした良い皮膚(正常な皮膚)を保つことができるようになります。
実際、私のアレルギー外来に通院されているアトピー性皮膚炎の方の多くは、多量の保湿剤を塗り続けることで、皮膚が徐々に正常化していき、最終的にはステロイド軟膏も保湿剤も塗らないで良い状態に至った方が多くいらっしゃいます。
問題は『保湿剤の量』
理論的には、多くのアトピー患者は完治を目指せるのですが、『皮膚の正常化』を目指すためには、膨大な量の保湿剤が必要です。
成人で全身の皮膚をしっかりと保湿するために必要な保湿剤の量は月に2000g(およそ2L)必要と言われています。
残念なことに、健康保険で1ヶ月で処方して良いとされている保湿剤はおよそ500gまでであり、成人では、アトピー性皮膚炎の完治を目指すための十分な量の保湿剤を処方することができないのです。
体重が10kgに満たない乳児期ならば、アトピーの完治を目指すのに十分な量の保湿剤は月300g〜400g程度ですむため、”赤ちゃんの頃から保湿剤をたっぷり塗りまくる” というのがポイントになります。
アトピー性皮膚炎の完治に重要なのはステロイド軟膏ではなく、保湿剤です!!
赤ちゃんの頃から長期間たっぷり塗って『皮膚の正常化』を目指しましょう。
アトピーの完治に最も大事な薬は『保湿剤』なんだね!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
コメント