にゃほー。
みんなはアレルギーって遺伝すると思う?
『アレルギーと遺伝』について解説するよ!
- 自分が『小児喘息』だったから子どもに遺伝したんじゃないか?
- 自分に『甲殻類アレルギー』があるから、子どもも『甲殻類アレルギー』になっちゃうの?
- お兄ちゃんがアトピーで治療しているんだけど、生まれたばかりの妹もアトピーになっちゃうの?
アレルギーで通院されているお子さんの保護者の方からよく質問される言葉です。
自分がアレルギーの体質を持っていると、子どもに遺伝してしまうかどうか心配になりますよね。兄弟に食物アレルギーやアトピーがあると、下の子もそうなるんじゃないかと気が気ではありません。
『アレルギーは遺伝するのか』について、今わかっている範囲でお伝えしようと思います。大きなテーマですので、数日に分けてお届けします。
アトピー性皮膚炎は遺伝するのか
近年までよくわかっていなかった
気管支喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど、アレルギーの病気はいくつかありますが、皆さんはこれらの 病気 は親子で遺伝すると思いますか?
昔から ”アレルギーの病気は親子で遺伝する傾向がありそうだ” と言われ続けてきました。統計的なデータでも確かにその傾向は見られるのですが、本当に遺伝しているのでしょうか?
実は近年まで、『アレルギーは遺伝するのかどうか』について確定的な証拠が見つかっていなかったんです。
アトピーの原因遺伝子として、『フィラグリン遺伝子異常』が見つかった
2006年、『nature genetics』という世界でも有名な科学誌に、”アトピー性皮膚炎患者の半数近くにフィラグリン遺伝子異常が見つかった” という研究報告が掲載されました。
『フィラグリン』というのは皮膚の保湿因子の一つで、皮膚内部に水分を保持して乾燥肌になるのを防いでくれる成分です。アトピー性皮膚炎では無い人は、体内で常にフィラグリンを作って乾燥肌になるのを防いでいます。
ところが、アトピー性皮膚炎ではこのフィラグリンをうまく作れない人が多く、フィラグリンを作るための遺伝子に異常がある人がかなり大勢いることが判明したのです。
研究手法の発達により、網羅的な遺伝子解析ができるようになった
昔から『アレルギーと遺伝子異常』については様々な研究がされてきたのですが、研究手法が原始的だったこともあり、1990年代まではあまり決定的な証拠が見つかリませんでした。
2000年代になると、遺伝子関連の研究手法がかなり発展し、大勢の血液サンプルを網羅的に遺伝子解析できるようになったのです。
これにより、”アトピー性皮膚炎の患者の何%にどこ遺伝子異常があるか” などが正確にわかるようになったんです。
アトピーの大多数は遺伝による発症
『アトピー患者のフィラグリン遺伝子異常』の発見以来、さまざまな遺伝子について研究が進みました。
アトピー性皮膚炎の発症に関与する遺伝子はフィラグリン遺伝子以外にもいくつか見つかったのですが、フィラグリン以外の保湿因子を作る遺伝子や、表皮の結合に関連する遺伝子など、『皮膚バリア』に関与する遺伝子がほとんどでした。
フィラグリン遺伝子異常はメンデル遺伝
少し専門的な話になりますが、フィラグリン遺伝子異常はメンデル遺伝の常染色体優性遺伝(最近は顕性遺伝と呼びます)と言われています。
高校の生物学で習いましたね? ^^;
- 父親か母親のどちらかにフィラグリン遺伝子異常があると、50%の確率で子どもにフィラグリン遺伝子異常が遺伝する
- 両親ともフィラグリン遺伝子異常があると、75%の確率で子どもにフィラグリン遺伝子異常が遺伝する
ごちゃごちゃした解説は教科書に任せるとして、誤解を恐れずにざっくり簡単にいうと『アトピーは生まれた瞬間にほとんど遺伝で決まってますよ。』ということです。もちろん親がアトピーじゃなくても発症することもありますが、少ないのは確かです。
遺伝しても発症予防が可能
もし親子でアトピー性皮膚炎体質が遺伝したとしても、大丈夫です!
頑張ればある程度予防できます!
最近のブログ記事、アトピーを完治させる その1 その2 まとめ で紹介した通り、アトピー体質を遺伝して生まれても、ある程度は ”発症予防” ができます。頑張りましょう!!
結論:アトピー性皮膚炎の大部分は遺伝
やっぱりアトピーって遺伝するんだね。でも、頑張れば発症予防できるんだって!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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