にゃほー。
『アレルギーと遺伝』の第二弾だよ!
食物アレルギーは遺伝するのか
多くの人が “食物アレルギーは遺伝する” と思っている
皆様、お待たせしました。
おそらく多くの方が知りたがっている『食物アレルギーは親子で遺伝するのか』について解説します。
実はアレルギー外来をやっていると結構な頻度で質問されます。
「私(母親)がそばアレルギーがあって除去しているんですが、(生まれてきた)子どももそばアレルギーになりますか?」「子どもに同じそばアレルギーがあると嫌なので、1回も食べさせたことがありません。」
外来を見ていると、親に食物アレルギーがあると、子どもにはその食品を食べさせない傾向が強いように思います。
果たして食物アレルギーは親子で遺伝するのか?現在報告されている情報に私の考えも交えて解説します。
「食物アレルギー」「遺伝」でググって(検索して)みると・・・
「食物アレルギーは遺伝要因(アトピー素因)と環境因子で発症します」と書いてあるページがほとんどです。詳細な説明はほぼ見当たりません。
「で、結局遺伝するの?」「遺伝要因(アトピー素因)って何?」「環境因子って何?」疑問しか湧いてきません。
実は『アレルギー学』の教科書には、上記の一文が載っているだけなんです。教科書には食物アレルギーが親子で遺伝するのかしないのか、きちんと書いていません。
アトピーと同じく、近年までほとんど研究されてこなかった
「食物アレルギーは親子で遺伝する気がする」と考える人は昔から多くいらっしゃったのですが、以前は遺伝子の変異(異常)を調べる手段が限られており、決定的な結論が出せていなかったのです。
2000年代になると、遺伝子解析技術が飛躍的に発達し、大人数の遺伝子を一気に解析できるようになりました。近年、各種アレルギー疾患の人の遺伝子異常解析が少しずつ進んできています。
食物アレルギーの人にも遺伝子変異(異常)が見つかった!?
食物アレルギーの人を対象にした遺伝子研究がいくつか報告されていますが、どの研究も「食物アレルギー発症に関与するかもしれない遺伝子異常を発見した」という内容です。
何の遺伝子異常なのか?
研究報告をよく読んでみると、食物アレルギーの人に見つかった遺伝子異常は「フィラグリン遺伝子異常」「表皮細胞の結合に働く遺伝子異常」などです。
見たことがありませんか? 昨日のブログ記事『アトピーは遺伝するのか』で出てきたのと同じ遺伝子です。
食物アレルギーもアトピーも、『皮膚のバリア異常』に関連する遺伝子異常が関連しているのです。
皮膚のバリア遺伝子異常→アトピー発症→経皮感作→食物アレルギー発症
以前のブログ記事『アレルギーは治る時代』『アレルギーは治る時代2』で解説しましたが、実は食物アレルギーのほとんどは生まれた後で ”病気になるかどうか” が決まる後天性疾患なんです。
アトピー性皮膚炎のような『皮膚バリア異常』があると、皮膚を介して食物が体内に侵入し、食物を敵と判断してしまう ”経皮感作” が起き、食物アレルギー体質が作られます。
食物アレルギーのほとんどは遺伝子異常で直接発症するわけでなく、”皮膚のバリア遺伝子異常→アトピー性皮膚炎発症→食物の経皮感作→食物アレルギー発症” という流れを経ていると考えられます。
直接「食物アレルギー発症」に関与する遺伝子もわずかだが存在するかもしれない
実はごく最近、食物アレルギーの発症に直接関与するかもしれない遺伝子も見つかりました。
小麦による食物アレルギーのリスク因子を発見(理化学研究所・島根大学)
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)という特殊な小麦アレルギーで、「小麦摂取+運動」で強いアレルギー発作(アナフィラキシー)が出るのが特徴です。この病気の人の73%が「HLA-DPB1*02:01:02」という遺伝子変異を持っていたそうです。
HLAというのは外敵から身を守る『白血球』に関連する遺伝子です。”この遺伝子変異があると、WDEIAを発症しやすい傾向にある” のですが、必ず発症するわけではありません。
このブログで何回も言っていますが、「皮膚炎があると食物アレルギーになる」「食べると食物アレルギーは予防される」んです。
親に”そば”アレルギーがあっても、皮膚炎がほとんどないお子さんは食物アレルギーを発症する可能性はとても低いです。鶏卵・乳・小麦アレルギーがなかったお子さんはなおさら心配ありません。離乳食の時期が終わったら少しずつ”そば”を食べさせましょう!
結論:
食物アレルギーになるかどうかは ”アトピー性皮膚炎を発症するかどうか” が決め手
食物アレルギーに直接関与する遺伝子はごくわずか
食物アレルギーが直接親子で遺伝するわけではなさそうだね!アトピー性皮膚炎の体質が遺伝するかどうかが重要みたい。
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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