『食物アレルギーを予防するための離乳食』が売られているらしいんだけど、ちょ、ちょっと待って!
乳幼児用のミックス離乳食(Spoonfuloneスプーンフルワン®︎)に関する注意喚起
食物アレルギーの体質が作られる前にその食材を食べ始めると予防できるかもしれない
以前のブログ記事『”検査陰性の食品は早く食べ始めた方が良い”というお話し』で詳細を書きましたが、もう一度大事な点だけおさらいします。
- 食物アレルギーの体質は生まれた後から作られる(多くは出生後〜離乳食開始時期くらい)
- 離乳食を食べる時期までに湿疹(皮膚炎)や乾燥肌があると食物アレルギーになりやすい
- 食物アレルギー体質が作られる前に食べると、その食品のアレルギーは予防される可能性がある
まだアレルギーになっていない食品は早めに食べる練習をした方が良いというお話しでした。
米国では様々な食材の混じった『ミックス離乳食』が流行り始めている
「じゃあ、離乳食始まったらジャンジャンいろんな食品混ぜて食べさせればいんじゃね?」的なノリかはわかりませんが、米国ではSpoonfulone®️というミックス離乳食が販売され、人気になってきている模様です。
Spoonfulone®️は、生後6ヶ月以降の乳幼児を対象とした、16種類の食物(鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、くるみ、ピーカンナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ゴマ、大豆、エビ、鱈、鮭、オーツ麦)のタンパク質30mgずつを含む離乳食です。
Spoonfulone®️が日本でも販売開始された
このSpoonfulone®️ですが、日本でもネスレ社から販売され始めました。
米国ではパッケージに「食物アレルギー予防目的」と明記されているのですが、日本では薬事法で「エビデンス(根拠と安全性)が確立されていない食べ物に治療効果を謳ってはいけない」という決まりがあるため、普通の離乳食として販売されています。
複数のアレルギー関連学会が「危険ですよ!」と注意喚起を出した
『ミックス離乳食』で子どもの食物アレルギーが予防できればとっても良いことなんだけど、まだ時期尚早といえます。
いくつか問題点があります。
- 離乳食早期から『ミックス離乳食』を食べると食物アレルギーが予防されるのかどうか、まだはっきりしていない(データが足りない)
- 離乳食開始の時点ですでに食物アレルギー体質になってしまっている人はいっぱいいる(その子が『ミックス離乳食』を食べたら食物アレルギーで重い症状を発症してしまうかもしれない!)
- 食物アレルギーの体質があるかどうかは、湿疹の有無やアレルギー血液検査(特異的IgE検査)だけでは判断できない
- 16種類もの食品全ての血液検査(特異的IgE検査)をするのは現実的ではない(乳児は採血するのがとっても難しく、少量しか採れない)
- もしこのSpoonfulone®️で症状が出てしまったら、16種類の中のどれで症状が出てしまったのかわからない
というわけで、2021年10月8日、日本小児アレルギー学会・日本アレルギー学会・日本小児臨床アレルギー学会・日本外来小児科学会・食物アレルギー研究会が連名で ”乳幼児用のミックス離乳食(Spoonfuloneスプーンフルワン®️)に関する注意喚起”を宣言しました!
理論上は『ミックス離乳食』で食物アレルギーが予防できる可能性はあるんだけど、すでにアレルギー体質がある場合は非常に危険です。『ミックス離乳食』を食べさせると食物アレルギーが予防できるかどうかについては、まだデータがほとんどありません。
安全性が担保されていませんので、現時点では私も全くオススメしません。
離乳食開始は1種類ずつ、少量からゆっくり増量していくが基本!
『ミックス離乳食』は安全かどうかまだわからないから注意してね!
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
ブログ、いつも楽しく拝見しています。
素朴な疑問ですが、こちらの離乳食は含まれる食材をクリアしていれば一応食べられるのだと思うのですが、(一度に様々な栄養素が取れるなどの)メリットはありますか?(調べた限りだとメリットは感じられませんでした・・・)
まゆさん ご質問ありがとうございます。
Spoonfuloneに含まれる食材はどれも微量なので、栄養補強の役割はほとんど果たさないと思います。
今のところは安全性が担保されていない以上、この食品を勧める強い根拠はありません。