にゃほー。
みんな、お待たせ〜!『コラム』再開だよ!
謎の小児急性肝炎
欧米を中心に『原因不明の小児肝炎』が増加している
みなさん、世界各国で『原因不明の急性肝炎』の報告が相次いでいるのをご存知ですか?
WHOの報告によりますと、すでに12カ国から報告され、患者数は170名を超えたそうです。日本からも3名が疑い症例として報告されています。(2022.5/1現在)
報告された患者さん全体の1割が肝移植が必要な重篤な状態で、死亡例も報告されています。
今のところ原因不明だが、アデノウイルスの関与が疑われている
現時点ではこの急性肝炎の原因は不明ですが、患者発生の広がり方から『感染症』の可能性が高いと見られています。
報告された症例のうち、ウイルス感染についての検査を受けた半数以上から「アデノウイルス41型」が検出されており、”今回の急性肝炎の原因ウイルスなのではないか” と疑われているようです。
もともとアデノウイルス41型は 一般的な ”胃腸炎ウイルス”
アデノウイルス41型は以前から存在するウイルスで、感染すると下痢・腹痛・嘔吐などの胃腸炎症状を起こしやすいウイルスとされています。
今まで、アデノウイルスによる肝炎は「免疫が弱っている人」での報告がそこそこあるようですが、「健全な小児」ではごくわずかしか報告がないようです。
なぜ ”健全な小児” なのに重症肝炎を起こしているのか?
アデノウイルスは変異しにくいウイルス
まだアデノウイルスが犯人と確定したわけではありませんが、「アデノウイルスが原因かもしれない」と疑われている状況ではあります。
新型コロナウイルスが様々な株に変異しまくっているように、「アデノウイルスが強毒株に変異したのか?」という考えもありますが、アデノウイルスは『DNAウイルス』という種類のウイルスであり、コロナウイルスなどの『RNAウイルス』と比べて変異しにくいウイルスとされています。
アデノウイルス新型株が出てきた可能性は否定できませんが、新型コロナウイルスなどと比べると可能性は低いかもしれません。
アデノウイルス画像、CDC/PHILより
コロナ禍で ”小児の免疫が弱っている” 可能性
今回報告されている『原因不明の小児の重症急性肝炎』は ”新型コロナウイルスでロックダウン(またはそれに近い政策)を行った国” での発症が多いようです。
もともと ”免疫が弱っている人” ではアデノウイルスによる肝炎が報告されており、もしかしたら今回の急性肝炎は「新種のウイルス」ではなく「多くの小児の免疫力が低下してしまった」のが主な原因かもしれません。
- 免疫力がしっかりしている→ウイルスをすぐにやっつけることができ、重症化しない
- 免疫力が大幅に低下している→ウイルスをなかなかやっつけることができず、重症化してしまう
まだ国内では患者報告は少数ですが、黄疸(皮膚粘膜の黄染)、嘔吐、腹痛、白い便などの「肝炎を疑う症状」が見られたときは早めに診察を受けましょう。
コロナ禍の影響で人類の『免疫力低下』が危惧されています。かといって新型コロナ流行中に無防備に出歩いてしまうわけにはいかないし・・・難しい世の中ですね。。。
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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