新型コロナワクチン接種後に心筋炎の副反応が起こることがあるんだって。大丈夫なのかどうか解説してもらおう!
普通の風邪でも他のワクチンでも急性心筋炎は起こり得る
急性心筋炎とは
急性心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の働きが悪くなって心不全を起こしたり、危険な不整脈を起こす病気です。重症度は様々で、ごく軽症の場合は自分では気づかないうちに発症し、自然に治ってしまうこともあります。劇症型といわれる重症例では短時間でショック状態から心停止に至ることもあります。
急性心筋炎の症状は、胸の痛み、動悸、息苦しさなどです。重症な例だと酷い倦怠感や冷や汗、意識障害などを伴うこともありますが、どの症状も重い感染症(風邪)などで見られることがある症状なので、気づきにくい症状です。
様々な原因があるのですが、風邪や胃腸炎のウイルス感染後に起きる急性心筋炎が最も多いとされています。他にも、予防接種ワクチン接種後、リウマチなどの膠原病、薬剤、アレルギーなどが引き金になることがあります。
急性心筋炎のメカニズム
メカニズムをものすごく簡単に説明すると、”体を守るための免疫システムが過剰に働いてしまい、自分の心臓の筋肉を攻撃する物質(自己抗体)を作ってしまう” です。
体内に入ってきたウイルスやワクチン、薬剤などを異物と判断し、体から排除しようと免疫システムが頑張ります。
体内に侵入した異物(ウイルスなど)のみを攻撃すれば良いのですが、免疫システムが強く働きすぎると、稀に自分自身の細胞を攻撃してしまう物質(自己抗体)を作ってしまうことがあります。
自分の心臓の筋肉に作用してしまう自己抗体を作ってしまい、心臓の筋肉に炎症が起きてしまうと『急性心筋炎』になります。
薬剤アレルギーなどで見られる『薬疹』なども似たメカニズムです
薬剤を”異物”と判断し、排除しようと免疫システムが頑張ります。自分の皮膚を攻撃してしまう自己抗体を作ってしまい、薬疹が出てしまいます。
強い風邪ほど急性心筋炎が多い
2〜3日で治る軽症の風邪は軽度の免疫反応で済みます。しかし、発熱が1週間も続くような強い風邪では、それだけ強い免疫反応がおきます。
そのため、軽度の風邪よりもインフルエンザなどの強い風邪の方が急性心筋炎を起こしやすいと言われています。
風邪の後に急性心筋炎が起こる確率はよくわかっていません。『インフルエンザにかかると、無症状(本人が気づかないごく軽症)の心筋炎も含めると10%程度が急性心筋炎を起こす』なんていう研究報告もあります。
ただ、実際に治療が必要になるような急性心筋炎はインフルエンザにかかった人の数千人に1人程度ではないかと言われています。
新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎
新型コロナワクチン接種後にも急性心筋炎が起こることがあるようです。特に10代・20代の男性に多く、1回目摂取よりも2回目接種に起こりやすいことがわかっています。大抵は接種後1週間以内に発症します。
急性心筋炎になる確率
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新型コロナウイルスにかかった方が圧倒的に心筋炎になりやすい
『新型コロナワクチン』でも、『新型コロナ感染症にかかってしまう』のも、どちらも急性心筋炎を起こす可能性はあります。
ですが、”新型コロナにかかってしまう方が圧倒的に多い” です。
厚生労働省・新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について、YAHOO!JAPAN ニュースより
「心筋炎が怖いからワクチンを打たない」は確率論的にもオススメしません
最近この『新型コロナワクチン接種後の心筋炎』が話題になってきており、「心筋炎になるのが怖いから接種したくない」と考える人もいるかもしれません。
もちろん、ワクチン接種後に心筋炎になる確率はゼロではありませんが、上記の ”確率論の観点” や、”ワクチン接種により新型コロナ感染時の重症化・死亡のリスクが激減する事実” などを考えると、「ワクチン接種をするのが妥当」と言えそうです。
『ワクチン接種による心筋炎』の方が『感染による心筋炎』よりも圧倒的に少ないんだね!
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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