みなさんこんにちは。
今日は食物アレルギーについてのお話です。いつものコラムではなく、食物アレルギーに対する私の考えを述べようと思います。
先日、「当ブログで読みたい内容は?」というアンケート調査を実施しました。多数のご投票ありがとうございました。
結果は既報の通りですが、『食物アレルギー』関連の記事を読みたい方が多かったです。それだけ食物アレルギーで困っている方が多いんだと思います。
今日は『食物アレルギーの難しさ』を考察します。
『食物アレルギー』と『他のアレルギー疾患』の違い
『食物アレルギー』と『それ以外のアレルギー疾患(気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性じんましん、アトピー性皮膚炎)』には決定的な違いがあります。何だかわかりますか?
『食物アレルギー以外』→ ダニ・ほこり・花粉・動物など、アレルギーの原因を避ければ良い
『食物アレルギー』→ アレルギーの原因を一生避け続けるのは困難
小麦や鶏卵、乳などはそこら中にあふれています。アレルギー原因食品を一生避け続けるのは困難です。
『食物アレルギー』の難しさ
- 「原因食品を避けなさい」
- 「症状が出ないように量を調節して原因食品を食べなさい」
どっちが簡単でしょうか?
短期間であれば「原因食品を避けなさい」の方が圧倒的に簡単です。
でも、食物アレルギー患者さんの実際の選択肢はこれです
- 「一生その原因食品を避け続けなさい」
- 「症状が出ないように量を調節して原因食品を食べなさい」
どっちも難しいですよね?
これが『食物アレルギーの難しさ』です。
「どのくらいの量なら食べて大丈夫か?」なんて簡単にはわからない
近年の研究で、「食物アレルギーは症状が出ない程度の量を食べ続けるとアレルギー体質を治す方向に作用する」ことがわかってきました。
でも「どのくらいの量なら食べて大丈夫か?」なんて簡単にはわかりません。実際に食べさせてみて初めて大丈夫かどうかわかるんです。
アナフィラキシーの危険性がある場合は『食物経口負荷試験』が必須
食物アレルギーでアナフィラキシー(全身に及ぶアレルギー症状)が出る可能性がある場合、自宅での食品摂取チャレンジは非常に危険です。”完全除去を続けている状態” から、”食べ始め” に移行するタイミングは特に危険です。
どの程度の量を食べさせるかは専門家による十分な検討が必要になります。病院やクリニックで専門家の下で摂取チャレンジをする『食物経口負荷試験』が必須です。
アナフィラキシーの危険性がほとんどない場合は『自宅での少しずつ増量』も可能
アナフィラキシーを起こす可能性がほとんどない場合や、かなりの量まで摂取できるようになってきた場合は、少しずつであれば自宅での摂取・増量が可能です。
ただし、どの程度のペースで増量していくかは専門家でないと判断が難しいです。アレルギー外来で摂取する量をよく相談する必要があります。
「症状が出ないように量を調節して食べさせる」という難題に立ち向かうには、専門的な知識が必要です。
私もまだまだ至らない部分も多いですが、アレルギー専門医として日々研鑽を積んで皆さんのお力になれるよう頑張ります!
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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