にゃほー。
今日は久しぶりにアトピーの話題だよ!
気がついたら最近アトピーの話題が少なくなっていました。
その日に書きたくなったことを気ままに書いているのでご了承くださいませ。
アトピーのもう一つの悪化因子
以前のおさらい
アトピー患者さんは是非以前のブログ記事を見返してください。アトピーを改善させるためのヒントをさまざまな視点からお伝えしました。
その中でも重要なのが、以下の2点。
- アトピーの根本的な原因は「皮膚バリアの破綻」→ 保湿剤などによる『皮膚の保護』が最重要
- ステロイド外用薬は「現在起きている炎症を一時的に鎮静化させるための薬剤」→ 皮膚の保護を行わなければ「炎症は繰り返し起きてしまう」→ 保湿剤などによる『皮膚の保護』をしっかりと行いつつ、今起きている皮膚炎をステロイド外用薬で抑え込む
これを上手に行うために、保湿剤を塗る分量など、細々したことをお伝えしてきました。
アトピーの治療で『もう一つの重要なこと』
今までの記事であまり触れてきませんでしたが、アトピーの改善のためには『もう一つの重要なこと』があります。
かゆみ対策 です!
『かゆみ』とアトピー
背中はきれい
アトピー性皮膚炎で治療中の皆さん、背中のど真ん中を見てください。他の部位と比べるときれいじゃないですか?
重症のアトピー患者さんでも、背中のど真ん中だけは皮膚炎が目立たず、きれいなことが多いです。
理由は・・・引っ掻かないから!(背中のど真ん中は手が届きにくくて引っ掛くのが困難)
さまざまな研究で、アトピーは「引っ掻く部位に炎症が起きる」「引っ掻かなければ皮膚炎を起こしづらい」ことがわかっています。
『掻破(そうは)行動』は皮膚バリアをボロボロにする
爪で皮膚を引っ掻くことを『掻破(そうは)』と呼びます。
爪を立てて皮膚を引っ掻くと、表皮はボロボロになります。遠目では少し赤くなっている程度かもしれませんが、電子顕微鏡などで皮膚を観察すると、表皮に小さな傷が無数にできており、あらゆる場所で目に見えないほどの「微小出血」を起こします。
アトピーの治療で最も大事なのは『皮膚バリアの保護』です。
『掻破行動』はせっかく保湿剤などで皮膚バリアを改善しようとしている部位を一瞬にしてぶち壊します。これではいくら頑張ってもなかなか皮膚炎が改善せず、何度も繰り返し皮膚炎が起きてしまいます。
アトピーでは『引っ掻かない』がすごく重要です!
かゆみ対策
引っ掻かないようにするにはどうしたら良いか?
答えは「かゆみを抑え込む」。単純です。
しかし、アトピー性皮膚炎のかゆみを抑え込むのは非常に難しいんです。
抗ヒスタミン剤
今まで、アトピー性皮膚炎のかゆみに対してよく処方されてきた薬が「抗ヒスタミン剤」です。別名「抗アレルギー薬」。
じんましんやアレルギー性鼻炎など様々なアレルギー疾患で処方されますし、鼻水止めとして風邪薬にも入っていることがあるので、皆さん飲んだことがあるのではないでしょうか?
抗ヒスタミン剤にはかゆみを抑える効果があります。
アトピーで長期間内服薬を続けている方もいらっしゃると思いますが、おそらく抗ヒスタミン剤です。かゆみの抑制を狙って処方されていると思います。
が、抗ヒスタミン剤はアトピーのかゆみを完全に抑え込むほどの効果はありません。「多少かゆみがマシになる」程度です。
各種外用薬
塗り薬(外用薬)のかゆみに対する効果についてです。
ステロイド外用薬
従来のステロイド外用薬の主な働きは「炎症を抑えること」。
炎症がしっかりと落ち着いて来れば、後々はかゆみも軽減するのですが時間がかかります。
ステロイド外用薬はかゆみを直接抑える効果は弱いといえます。
タクロリムス軟膏(プロトピック®︎)、デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®︎)
どちらも近年発売された塗り薬です。
ステロイド外用薬とは違うメカニズムで炎症を抑え込みます。
ステロイド外用薬よりもかゆみを抑える効果に優れていると言われています。特にタクロリムス軟膏はかゆみを完治する神経に直接的に働く作用が少しあるようです。
残念ながら、どちらも2歳以上にしか処方できません。アトピー治療で最も大事なのは発症してすぐの1歳未満なのですが・・・
かゆみに対する「新薬」
アトピー性皮膚炎の治療で「かゆみ対策」がめちゃくちゃ重要なことがわかってきたわけですが、既存の薬剤ではなかなかかゆみを抑えきれません。
現在、『かゆみを抑え込む』のを重点にした「新薬」が開発途中です。数年内に発売されるのが期待されています。
新薬の開発には安全性試験など、かなりの時間がかかります。途中で開発中止になることも多いため、気長に待つ必要があります。
ということで、アトピーの完治のためには『かゆみ対策』がすごく重要なんですよ!
早く良いかゆみ止めが開発されるといいですね。。。
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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