にゃほー。
集中講義、第3弾だよ!
みなさんこんにちは。
今日も人工ミルクと乳アレルギーに関する話題ですよ!
生後3日以内のミルクは乳アレルギーのリスク
原著論文
Primary Prevention of Cow’s Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow’s Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial, Mitsuyoshi Urashima, et al, JAMA Pediatr. 2019 Dec 1;173(12):1137-1145.
ABC study
対象
父母または兄弟にアトピー性皮膚炎があり、アレルギーリスクが高いと見なされた312人の新生児
方法
出生直後にランダムに「非ミルク群」「ミルク群」に振り分け、2歳の時点で乳アレルギー感作(血液検査=乳特異的IgE検査で確認)の有無を調査した。
- 非ミルク群…生後3日間は「母乳のみ」または「母乳+アミノ酸乳(アレルゲン性の無いミルク)」のみ
- ミルク群…生後3日間は「1日5ml以上のミルクを摂取」
結果
2歳の時点で乳アレルギー感作が確認された割合は
「非ミルク群」24名(16.8%)「ミルク群」46名(32.2%)
生後3日以内にミルクを摂取したほうが乳アレルギー感作が多いという結果だった
解説
「えっ?!」と思ったあなた!
当ブログをしっかり読んでくださっています。
昨日のブログで紹介した SPADE study では、『生後1ヶ月から3ヶ月まで人工ミルクをしっかり摂取した児は牛乳アレルギーになりにくい』という結果でした。
今日ご紹介した論文では全く逆の結果が出ています。
どちらがホントなのでしょうか?
どちらの論文もかなりしっかりデザインされた研究であり、”研究のやり方がまずかった” ということは無さそうです。おそらく《どちらの論文も間違っていない》と思います。
- ABC study「生後3日間にミルクを飲むと乳アレルギーになりやすい」
- SPADE study「生後1ヶ月から3ヶ月までミルクを飲むと乳アレルギーになりにくい」
かなりざっくりまとめましたが、この2つの研究、大きな違いがあります。
「ミルクを飲ませるタイミング(月齢)」が全く違うんです!
この2つの研究結果が間違いでないとすれば、
『生後すぐのミルクは乳アレルギーを誘発する可能性があり、生後1ヶ月以降のミルクは乳アレルギーを予防する可能性がある』
という仮説が成り立ちます。
正直なところ、”ミルクは乳アレルギーを予防するのか、発症リスクになるのか” については、まだまだ研究データが不足しています。まだ鵜呑みにしてはいけません。
ある程度の結論を導くためには、「なぜミルクを飲ませるタイミングが異なると結果が正反対になるのか」「どのくらいの時期に、どのくらいの量のミルクを飲むのがベストなのか」といった追加の研究が必要と思われます。
『食物アレルギー予防』に関しては研究が始まったばかりです。もっとデータが集まってくるまで、1つの研究結果を鵜呑みにしないで待ちましょう!
文責; 小柳貴人(医学博士・アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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