新型コロナウイルスばかりが注目されているけど、小児のRSウイルス感染症が大流行していて大変なことになっているみたいだよ!💧
RSウイルス感染症が大流行
新型コロナに隠れてひっそりと拡大
昨年春から新型コロナウイルスによるパニックが続いています。およそ1年かかって新型コロナウイルスに有効なワクチンが開発され、医療関係者・高齢者を中心に多くの人が予防接種を受けましたが、若者を中心に患者数が再増加の一途を辿っています。
東京オリンピックも始まり、オリンピック報道と新型コロナ患者数報道が交互に繰り返されるカオス状態になっていますが、実は小児科領域ではもう一つの危機がやってきており、日々対応に追われれています。
RSウイルス感染症です!
ゴールデンウィーク頃から徐々に増加
RSウイルス感染症は昔から存在する呼吸器感染症(いわゆる風邪)の一つで、この数年間は初夏に流行が見られています。
昨年は新型コロナパニックにより、ゴールデンウィークから夏休みまでの期間、乳幼児も含めた小児はみんなマスク・手洗いをし、外出を控え、極力人との接触を避けました。
その結果、昨年1年間は、新型コロナウイルス以外のほぼ全ての感染症の流行が見られませんでした。
新型コロナへの対応は今年に入り少し変化し、乳幼児にマスクをさせない保育園・幼稚園も増え、習い事や買い物などの日常生活はそれなりに再開されています。
そのため、昨年ほぼゼロだったRSウイルス感染症は乳幼児を中心に、ゴールデンウィーク過ぎから徐々に増加し、7月の時点で例年の2〜3倍、過去最高の患者数となる大流行が見られています。
重症患者が多い!
長岡市内の小児科病棟はすでにいっぱい
長岡市内では7月過ぎからRSウイルスに感染する小児が爆発的に増加しています。すでに3病院の小児科病棟はRSウイルス感染症の児でほぼすべて埋まっている状態です。
もちろん、改善すれば退院するのですが、退院してベットが空いた直後に新しい患者さんで埋まっていくような状況です。
これ以上患者数が増加すると長岡市内で対応しきれなくなる恐れがあります。
明らかに重症患者が多い
さらに困ったことに、酸素投与や人工呼吸器が必要になるような重症患者がかなり多い印象です。
患者数が多いので、重症者ももちろん多くなるのですが、入院患者に占める重症者の割合がかなり高いように感じています。
もともと、RSウイルス感染症は乳幼児で重症化しやすい感染症であり、最重症では命を落とす場合もあります。新型コロナウイルス感染症は乳幼児で重症化しにくく、死亡例も稀ですので、小児にとってはRSウイルスは新型コロナウイルスよりも怖い感染症と言えます。
RSウイルスには特効薬が無い
インフルエンザに対するタミフル®︎のような特効薬が無い
残念なことに、RSウイルスを直接やっつけるような特効薬はありません。そのため、入院が必要な重症例でも、主に酸素投与と風邪薬の内服で乗り切らなければならないのです。
当然、入院期間も長期になりがちです。
RSウイルスには後遺症がある
RSウイルス感染症には、さらに困ったことに、後遺症が存在します。『気道過敏』です。
RSウイルス感染症は通常、2週間程度で治癒しますが、その後も夜間や運動時などに咳が出るといった『気道過敏』症状が、数ヶ月から数年間残ってしまうという後遺症が知られています。
正確な統計をとったわけではありませんが、入院治療が必要だった患者の約半数にその傾向があるように思います。
“RSウイルスに感染すると喘息体質になる” という噂を聞いたことがある方もいらしゃるかと思いますが、この『気道過敏』の後遺症のことです。
気道過敏に対しては喘息薬が有効
この『気道過敏』の治療には気管支喘息薬が有効であり、内服薬・吸入薬などが処方されます。
症状がしっかりと落ち着くまでは数ヶ月から数年かかることが多く、長期間気管支喘息薬を使用することから、”気管支喘息” という病名をつけられることが多いです。
RSウイルスの風邪に気をつけよう!
RSウイルスには予防接種が存在しません。シナジス®︎という予防薬はありますが、未熟児や免疫不全患者などのみ使用できる特殊な薬です。
「RSウイルスなんて普通の風邪なんだから赤ちゃんのうちに感染したほうが良い」という意見もありますが、個人的には今年流行しているRSウイルスは強いイメージがありますので、生後3ヶ月未満の早期乳幼児は特に感染しないようにする努力が大切だと思います。
- マスク(2歳未満は窒息などの危険もあるので推奨されていません。)
- 手洗い
- マスクを外しての会話を控える
- 他人との接触をできる限り控える
というわけで、基本的な感染対策が重要になります。(コロナ対策と一緒やんけ〜)
RSウイルス感染症って、乳幼児では怖い感染症なんだね。特に赤ちゃんは要注意みたい。
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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