今日はアレルギーに関連する論文を紹介するよ!
妊娠中の食べ物と児のアレルギー疾患を調査
妊娠中に野菜とヨーグルトを食べると児のアレルギーが減る!?
今回紹介する論文は、妊娠中に食べるものが児のアレルギー発症に関連するかどうかを調べた物です。
方法
- 妊娠中に食べた食事を調査し、野菜、ヨーグルト、フライドポテト、米または穀物、赤身肉、果汁100%のジュースおよびコールドシリアルをどのくらいの量食べたかどうかを調査。
- 産まれてきた児が4歳になるまでに、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎を発症したかどうかを調査。
- 上記1と2のデータを統計学的に比較し、妊娠中に何を食べていると、児のアレルギー発症に関連するかを調べた。
結果
野菜およびヨーグルトにアレルギー疾患予防効果が、フライドポテト、米、穀物、赤身肉、100%ジュース、コールドシリアルにアレルギー疾患の増加との関連が認められた。
本当にそうなのか?
この論文だけを読むと、妊娠中に野菜とヨーグルトをいっぱい食べると児のアレルギーが予防できるというデータに見えるかもしれません。
しかし、こういった論文は注意して解釈する必要があります。
この論文は、①妊娠中の食事、②児のアレルギー発症、の2つにしか注目しておらず、それ以外の要素についてはまったく調べていません。
例えば、
- 児が産まれた後で何を食べて育ったか
- 児が普段からスポーツをするかどうか
- 都会に住んでいるか、田舎に住んでいるか
等々、どんな環境で児が育ったかについてのデータが全く含まれていません。
こういったデータが抜けてしまうと、データにさまざまな影響が入り込みます。
- 都会育ちはコールドシリアルを食べる機会が多い
- スポーツを日常的にする家庭は肉を食べる量が多い
- 母が妊娠中に野菜・ヨーグルトを多く食べる家庭は、児が産まれた後、野菜・ヨーグルトを多く食べさせる
このような、調査されなかったデータが結果に影響するものをバイアスと呼びます。
今回の論文はバイアスが多くて信用度は低め
私見ですが、今回の論文は調査されなかったデータの影響( バイアス)があるかもしれないため、信用度は少し低いのではないかと考えています。
食物繊維、発酵食品はアレルギーを減らすかもしれない
実は、他のいくつかの論文で、野菜などに多く含まれる食物繊維、ヨーグルトなどの発酵食品は、腸内の善玉菌を増やす効果があり、アレルギー疾患の発症を防ぐかもしれないというデータが集まってきています。
妊娠中に食べるのが児に影響するかどうかはわかりませんが、児自体が食物繊維・発酵食品を定期的にに食べるのはいい影響があるかもしれません。
また別の機会にまとめて紹介できればと思います。
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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