空気清浄機って空気中のゴミ・雑菌を減らしてくれるんだよね?どういうこと?
”空気清浄機を設置している家庭に喘息入院児が多い”
とある小児アレルギー権威の医師から言われた言葉です
以前、小児アレルギー、特に気管支喘息の分野で著名な先生と面談する機会をいただき、その際の雑談中に伺った言葉です。
空気清浄機を設置している家庭に喘息入院児が多い
家庭環境と喘息発症について大規模なアンケート調査を行ったそうです。その結果、『空気清浄機を設置している家庭の方が喘息入院率が上がる』という衝撃的な結果を教えていただきました。「空気清浄機メーカーから怒られそうなので、この結果は公表できない!」ともおっしゃっていました。
空気清浄機は空気中のチリや雑菌を減らす効果があります。さらに、ナノイーとかプラズマクラスターなどの補助機能付きだとこの効果は倍増すると言われています。
当然、『空気清浄機=喘息発作を減らす』と思っていました。
この言葉を聞いて、私は「空気をきれいにするはずの空気清浄機が床のホコリを巻き上げてしまうのかな?」とか「空気清浄機内の水にカビが生えてしまったのかな?」とか、様々な要因を考えました。
卵が先か、鶏が先か
実はこれにはカラクリがあります。この言葉、少し見方を変えてみてください。
子どもが喘息体質だから家庭に空気清浄機を設置した
これならどうでしょう?
空気清浄機が悪さしたとは思えませんね。
科学データには必ずバイアス(想定外の関連因子)が関わっています
現在、コロナ禍で様々な科学データが発表されていますが、実はほとんどの研究発表にはこのような想定外因子(バイアス)が絡んできます。
例えば、『デルタ株はワクチン接種の効果が少し落ちてしまうようだ』というデータ。このデータにもバイアスが関わってきます。
- デルタ株が発生したのは従来株やアルファ株が発生してから半年程度経過した後であり、多くの人は予防接種をしてからかなりの時間が経過している。
- デルタ株の流行が始まった時には、すでに多くの人の体内の抗体量が減少してしまっていた。
いかがでしょうか?
これならワクチン接種していても感染する人が出てきてもおかしくありませんよね。
このように、現代では様々な研究発表が行われていますが、完全に研究条件を揃えない限り、正確なデータを採るのは難しいのです。
ちなみに、上記のバイアスは多少は関わっているとは思いますが、『ウイルスの構造的にワクチンが効きづらいかもしれない』とのことですので、本当にデルタ株は予防接種効果が落ちるのだろうとは思います。
研究データを全て鵜呑みにするのは危険
現代は、日々様々な研究データが発表されているのですが、どんな研究にもバイアス(想定外関連因子)がつきまといます。
『1つのデータをすぐに鵜呑みにせず、多くのデータが集まってから結論を出す』というのが大事です。
これは医学だけでなく、全ての分野に通じる真理かと思います。
危なかった〜。あやうく空気清浄機を捨てちゃうところだったよ!いろんなデータが出てくるけど、しっかりと吟味しなきゃね。
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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