にゃほー!『アレルギーと遺伝』シリーズ、今日は休憩だよ。
はちみつアレルギーについてお話しするよ!
”アレルギーは遺伝するのか” シリーズの途中ですが、先日『はちみつ』アレルギーのご相談があったので、今までの知識・新しく調べたことを忘れないうちにまとめます。ニッチな分野すぎて教科書には全く載っていません。
おそらくこの記事がささる人はごく僅かだと思うのですが、このブログは私が勉強した内容を書き留めておく備忘録でもあるので、お付き合いください。
はちみつアレルギー?
はちみつの成分
ミツバチのメスによって採集された花の蜜(主にスクロース)はミツバチの唾液に含まれる酵素の作用でフルクトース(果糖)とグルコース(ブドウ糖)に分解されます。
フルクトースとグルコースはそれ以上分解する必要のない単糖類であり、腸からの吸収も早く、すぐにエネルギーとして使われます。力仕事やスポーツの直前・最中に摂取するのに最適な糖分です。
はちみつにはフルクトースとグルコースの他に少量のビタミン類・ミネラルを含みます。また、ごく微量ですが、ミツバチの唾液成分であるコリンという成分と、難消化性のデキストリンという炭水化物を含みます。
はちみつのほとんどは糖分でできているため、食物アレルギーはほとんど無い
食物アレルギーは食品中のタンパク質が原因となります。糖分は食物アレルギーの原因となることはまずありません。
そのため、『はちみつアレルギー』の患者さんは理論上ほぼいないとされています。
『はちみつアレルギー』のご相談は今回で2例目
私は長らくアレルギー外来を開いていますが、”はちみつを食べると具合が悪くなる” というご相談が計2例ありました。
1例目は「食べると気分が悪くなる(吐きそう?)」、2例目は「食べた後で必ず下痢をする」という症状です。
2例とも一般的な食物アレルギーの症状でみられる『じんましん』が出ていない
食物アレルギーでは9割以上で『じんましんや目の痒みなどの皮膚・粘膜症状』を伴うとされています。今回は2例とも皮膚・粘膜症状はありません。この時点で、一般的な食物アレルギーの可能性は低いだろうと考えています。
『はちみつアレルギー』の多くはアレルギーでは無い
ほとんどははちみつの成分による症状
文献がほとんど無いので、正確なエビデンス(証拠)は無いのですが、いくつかの研究報告を統合すると、”はちみつを食べると具合が悪くなる” 場合の多くは食物アレルギーではなく、はちみつの成分による症状のようです。
コリンという成分で口の中が痒くなったり、難消化性デキストリンという成分で下痢をすることがあるようです。どちらも食物アレルギーとはメカニズムが違います。アナフィラキシーのような ”命が危ない” 症状には至らないと思われます。
ものすごく稀だが『本物のはちみつアレルギー』も存在
ものすごく稀ですが、はちみつが原因になる『食物アレルギー』も存在するようです。
1つ目は、はちみつに微量に混入した『ハチ毒(針で刺された時の毒)』による食物アレルギーです。ハチに刺されたことのある人の一部はハチ毒に対してアレルギー体質になります。その後、ハチミツ内の微量のハチ毒を食べてしまうことで発症する可能性があるそうです。
2つ目は、はちみつに微量に混入した『花粉』による食物アレルギーです。花粉症の体質がある人が、花粉を食べてしまうことで食物アレルギーを起こす可能性がります。
教科書やウェブサイトを調べても『はちみつアレルギー』はあまり情報がありません。研究報告もほとんどされていません。そのため、もしかしたら誰かの役にたつかもということで記事を書きました。
このブログってニッチな内容が多いね。誰か喜んでくれるといいけど・・・
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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