にゃほー!今日はアトピーについてのお話だよ。
アトピー性皮膚炎は不治の病?
アトピーは治りづらい
皆さん、アトピー性皮膚炎についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
- なかなか治らない
- 薬を塗れば良くなるけど、やめるとすぐに悪くなる
- 薬を一生やめることができない
こんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?
この数年間でアトピーの新薬が続々登場!
もともと、アトピー性皮膚炎の治療薬と言えば、ステロイド薬(たくさんの種類があります)がメインであり、それ以外の炎症治療薬はほとんど使用されていませんでした。
タクロリムス軟膏(プロトピック®︎) ー外用薬
およそ20年前にタクロリムス軟膏(プロトピック®︎)が追加され、治療法にも幅が出てきましたが、重症のアトピー患者を寛解(治療して症状がほぼ落ち着いている状態)・完治(治療薬を使用しなくても症状がない状態)させるのはなかなかの困難でした。
シクロスポリン ー主に内服薬
2008年にシクロスポリン(免疫抑制剤、アトピーでは主に内服)が承認されましたが、免疫抑制という副作用の懸念から、成人の重症アトピー患者に使用されるのみでした。
デュピルマブ(デュピクセント®︎) ー皮下注射薬
2018年、ついに画期的新薬が登場します。デュピルマブ(デュピクセント®︎)です。この薬は2週間に一回投与する注射薬なのですが、アトピー性皮膚炎の炎症反応の最も起点に近い部位に作用する薬で、本当によく効き、アトピーの特効薬と呼んでも良いレベルの薬です。ただし、いくつか問題があります。
- 15歳以上で既存治療(ステロイド軟膏など)で治療が困難な重症例に使用が限られている
- 2週間に1回の注射が必要
- 高価な薬である
非常に良い薬なのですが、上記の問題点があるため、今のところ対象者が限られています。
重い副作用報告もあまりなく、比較的安全な薬ですので、今後小児や軽症〜中等症アトピーにも使用できるようになって欲しいなと思います。
デルゴシチニブ(コレクチム®︎) ー外用薬
2020年6月に承認された新薬です。これもデュピルマブと同様、炎症の起点に近い部分に作用します。
ステロイド軟膏は炎症を抑える効果は強いのですが、皮膚のバリア機能を取り戻す効果や、かゆみに対する効果はほとんど期待できません。これに対し、デルゴシチニブは皮膚のバリア機能の回復と、痒みを抑える効果も兼ね備えており、アトピー性皮膚炎にとって理想的な効果です。
デルゴシチニブは皮膚の透過性が非常に良く、皮膚深部に効きやすいと言われていますが、多量に使用した際の安全性がまだよく分かっていないため、1回5gまでという使用上限があります。そのため、全身に使用するのは今のところ難しいです。
今後、安全性が確認され、使用量制限がある程度解除されると使いやすくなると思います。
バリシチニブ(オルミエント®︎) ー内服薬
デルゴシチニブと作用部位が近い内服薬です。もともとはリウマチ薬でしたが、アトピー性皮膚炎にも効果があることがわかり、2020年12月に適応が追加されました。わずかながら全身性の副作用の報告があり、成人の重症のアトピー性皮膚炎患者に使用が限られています。また、この薬はアトピー性皮膚炎に対しては皮膚科医しか処方できない決まりがあります。
以上、この数年で新規に承認されたアトピー性皮膚炎薬を列挙しましたが、実はこれ以外にも、もう数種類の新薬がスタンバイ中です。
で、結局新薬はどうなの?
今までステロイド剤しかアトピー炎症を抑える手段がなかったため、様々な選択肢が増えるのは非常に喜ばしいことです。とりわけ、デュピルマブは安全性・効果とも申し分なく、”夢のアトピー特効薬” と呼んで良い薬なのですが、上記のように、高額な注射薬であること、小児に使用できないことなど、解決しなければいけない課題があります。
結局は従来のステロイド軟膏・保湿剤の適正使用が大事
重症例についての選択肢はかなり増えてきましたが、軽症例に多量に使用できて、副作用の心配もほとんどなく、よく効く薬は今のところありません。今後に期待したいところです。
ただ、現在は『プロアクティブ療法』と呼ばれる、軟膏の有効な使用方法が提唱され、効果を挙げています。適正使用する限りはステロイド軟膏の副作用はほとんど心配ありませんので、みなさん、主治医に薬の使用法をしっかりと指導してもらいましょう!
文責; 小柳貴人(アレルギー専門医 ・小児科専門医)
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